北風吹く
海 そして歩く
シャッター通りを
記憶の幻
夏祭りの音
夕餉の支度の匂い
今ではもう使われていない電話番号
シャッターのなか
月日が積もる
棚やミシンに
埃が舞うこともなく
扉 動きを止めた
錆びない想い出を
抱きしめるように
ひたすらただ歩く
懐かしい 愛おしい 私の街
コートのマフラーに 初雪ひとひら
光よ 照らしてよ
あの日を笑顔のままで 眠らせて
「いつものやつ」それだけで通じる
温かな日常
誕生日に
自分で持ちたいと言って転んだ
バースデーケーキ
幼い頃に受けとったすべて
あたり前じゃないと解った
時間の階段のぼって ふり返る
リボンで ありがとう
結ぶかのように
見つめながら歩く
懐かしい 愛おしい 私の街
フードのその陰に 涙がひとひら
たいせつなものたちの面影よ
ずっとずっとしあわせに
そっと眠って