いつもひとり 畳の部屋で 囲碁を打っては お酒を飲む
小さい頃は 遊んで欲しくて 膝の上で 眠ったことも
大人になると あなたを 遠ざけるようになっていった
目も合わさず 口もきかず たばこの匂いが 嫌だった
曲がったことがきらいな人で あなたはいつも厳しかった
口うるさいあなたが 煙たくて ぶつかってばかりだった わたし
近づきたくて 近づけない あなたから 離れた
東京で暮らすわたしに あなたは会いに来てくれた
待ち合わせの池袋駅 行くかどうか迷っていた
おしゃれなカフェに連れていった 落ち着かない様子のあなた
強い訛りで話すから 周りの目がとても気になった
小銭を集めて買ってくれた 渋い茶色の腕時計
わたしとの距離を縮めたいと願う せいいっぱいのそのやさしさ
それでも 素直になれなくて そのまま捨てた
身体が弱くて 病気がちな わたしが夜中に熱を出すと
母の隣であたふたしては 頑張れよと 頑張れよと
孫をあやす目尻のしわ 増えた白髪 痩せた頬
言えなかった言葉がある 今 あなたに 伝えたい
今 あなたに ありがとう