幼い頃から耳を澄ませば、ほんとうに小さな音も聴こえて來た。遠い雲
が雨を手放す間に、木々の笑う聲。時と言う時はそう音楽になり、欲しい
ものなどなかった。
どれほど強く望もうとも、どれほど深く祈ろうとも、もう聴こえない。
あなたの命を聴き取るため、代わりに失ったわたしのあの素晴らしき世界。
GOODBYE。
唯一の母親に、娘は漏れなく取って置きの魔法をかけられているのだ。
青い海が陽射しを抱擁する様に、それは護られていく。出會すシーンはす
べてハイライトで、みな、掛け替えのないキャストだった。
どれほど強く悔やもうとも、どれほど深く嘆こうとも、帰れやしない。
わたしは今やただの女。さよなら、あなた不在のかつての素晴らしき世界。
GOODBYE。